2010年2月13日

"素朴な写真家にまいもどりました"

「犬の記憶」 ©NHK より画面引用

 写真家で誰が凄いって、やはり、この人の生き様が抜群・・・。
それにしても、実に謎ですよね。どうしてアノ前もアノ後もこんなに凄いのか。

「中平卓馬 来たるべき写真家」 ©  河出書房新社
 
中平卓馬。言論の世界から写真に飛び込み、リリカルな作品から「植物図鑑」まで、実にさまざまな映像作品と評論文を残し、芸術批評では理屈っぽさで東洋一と言われた仏文の蓮實重彦氏(元東大総長)までコテンパンに打ちのめし、その後、不幸な事故で「素朴な写真家」の別次元の高みへ昇った伝説の大人物です。写真も凄いが昔の文章も凄い・・・確実にノックアウトされます。
実は、私、かつて中平氏のお住まいのすぐ近くに住んでいました。今でも、自転車に乗って撮影に出かけられているようです。「犬の記憶」という番組でも、演歌を歌いながら自転車で撮影に行っている様子が紹介されました。さっと走って被写体に歩み寄り、縦に構えて素早く撮る。風を切るような撮影光景が目に焼き付いています。

「原点復帰−横浜」 ©中平卓馬

彼の代表作は70年の「来たるべき言葉のために」と言われていますが、私は、77年に彼が記憶を失ったあとの作風のほうが「ドドーン」と来ます。こういうアッケラカンとした、それでいて実に割り切りのいい鮮やかな縦写真は、私のストライクゾーンです。それに、理屈をこねくり回したような論評集も愛読しています。存在感もますます高まっているような気がするのは、私だけでしょうか? 今後の活躍を、密かに熱望しています。